H11年契約の当別町にある道有林トドマツ人工林の分収林が満期を迎え、各オーナーにその森林の「現地説明会」の案内が届いた。分収育林とは、聞き慣れない言葉であるが、平易に言うと、50年以上もの長期を要する林業経営において、「仕掛かり資産(森林)は持つが経営資金(カネ)に不足する所有者(北海道)が、広く道民(資金提供者=オーナー)から資金を集め、それを使って(森林管理者が)森林の手入れをし、契約満期にその森林を伐採し、その収入を所有者、資金提供者、森林管理者の3者でその持ち分に応じて分け合う(分収)制度」である。
これは昭和50年代末、私が道有林(育林係)に勤務していた頃、導入を検討した制度で、全道各地の道有林の中から地位、地利、成長の優れた造林地を分収育林の候補森林として選抜したものである。その後、平成11年、第二の職場、森林整備公社に採用になったとき、記念として1口購入しオーナーとなった因縁の深い、旧当別林務署管内の昭和38年植栽のトドマツ造林地(5ha)であった。
同公社は、毎年、分収育林のオーナーを集め、当別「道民の森」の一角にある道民ボランティアにより造成された「水源の森」において、蔓切り・除伐など「育樹の集い」を催している。
今年は、コロナ禍の中、5月21日に21名の参加で、「北ぐにの森、オーナー育樹の集い」と銘打って久々にイベントが行われた。これについては、我がHPにご紹介済みである。ご覧あれ!!
そして、6/29、隣接する当別町青山奥地区にあるH11当別分収育林地5.02ha で関係するオーナーを集め現地説明会が計画されていた。この案内は3/22、事前に公社よりあり、”「H11北ぐにの森・当別」主伐調査の結果について”として、分収育林についての克明な資料が送られてきた。
- 森林管理者から事前に送られてきた資料。
- 森林管理者から当日配布資料。
資料によると、H11年(契約当時)の森林状況は、平均直径22cm、樹高16m、蓄積269m3/haであったものが、R3年には、直径34cm、樹高23m、蓄積591m3/haとなっている。
また、これまでの分収契約満了トドマツ人工林19箇所の平均蓄積481m3/haに比べ、当森林は22%も多く、単木平均でも24%も多くなってる。
ちなみに、当時(1962)、国の林業試験場の松井善喜博士作成の「トドマツ人工林収穫予想表」に比べると、その1等地(60年生)の直径33cm、樹高23m、蓄積483m3/haのいずれをも凌駕し、主林木の年平均成長量8.1m3/haに対し10.2m3/haと26%も越えている。
- 1962 松井博士作成の「トドマツ人工林収穫予想表」 の1等地の指標 60年生までの、主林木、副林木の直径、樹高、本数、蓄積、単材積などが記されている。
- 当時の収穫予想表(1976)
また間伐量を含む総収穫量では、当時の収穫予想表の「特等地」に該当し、特に分収期間の約20年間は、年19.4m3/haとそれまでの2倍の成長を示している。
私の記憶では、当別青山奥地区は、多雪地帯のうえ地滑り地形でかつ重粘土と森林造成の困難な、生産力に低い地域であった。それがこの様な高蓄積となっているのを知って、現地案内を楽しみにしていた。
6/29 当日は終日雨の予報がはずれ、曇り空の中、迎えのマイクロバスに乗って JR当別駅経由で道道275を北上し、月形町月ヶ丘の中和小学校前で左折し、知来乙の月形道民の森事務所に集まり、全員マイクロバスで現地に向かった。
暫く当別町と月形町の町界の林道で分水嶺を走り、当別町側の青山奥の現地に着いた。
現地は当別川の支流4号沢の上流部に位置し、海抜150~200mのなだらかな尾根部に位置していた。そこに至る稜線部には、樹高が高く(20m)、通直で直径30~40cmのマカバ純林に近い樹群がいくつも見られた。 月形側は、中野地区といい、昭和40年当時、旧岩見沢林務署管内屈指のトドマツ優良人工林団地であった。
現場100m位手前でバスを降り、分収林の明認施設(看板)の前に集まり、担当課長Sより現地説明を受けた。これまで2回の間伐で、不要・不良木が淘汰し、しかも共に間伐収入を上げた等の報告があった。
- 案内板前での「森林管理者」の挨拶
- 森林管理者のs課長の現地説明
- 案内板前での「分収育林地の施業経過」の説明
- 案内板前での「分収育林地の施業経過」の説明
現地は、間伐により上層が疎開し、林床には光が届き、ササ、シダ類にウドなどの大型草本がみられ、林内の遙か奥まで見渡せるほどに手入れの行き届いた見事な森林であった。立木(幹材)には、若干凍裂がみられるが、さほど深くなく、被害は大したことはないという。
説明が終わると質疑がなされ、最後に施設前で全員で記念写真の撮影をし、現場を後にした。次いで、月形地区の木工芸館に集まり、机に座って、資料の詳しい説明を受けた。
- 月形地区、木工芸館での説明会。
- 月形地区、木工芸館での説明会。
収支予測では1口20万円に対し25万円が返ってくるとのことで、これを聞き、みんな満ち足りた表情で帰路についた。(ふたを開けると40.5万円と2倍以上で、これまでの最高額であった。)
中国の台頭、ロシアの侵攻等を反映しての木材の高値とすれば、喜ぶべきか悲しむべきか・・・?
複雑な気持ちです。
ではまた!!。
コメント
木々は育つものですね