野生化アライグマの捕獲とその生態

北米原産のアライグマは、昭和末期よりペットとして大量輸入され、ブームが去ると山野に放棄され、本道でも平成十年頃には野外増殖を始めた。この外来動物は、どこでも生息できる旺盛な行動力を持ち年間1億円もの農業被害を与えている。私たちはこの捕獲を北海道で始め、10年間で約3千頭を捕獲し、その生息環境の解明を行った。(写真は40年前ヨセミテで撮影)

北海道のアライグマの捕獲、駆除について 
アライグマは北米が原産地で、本道には生息していなかった。しかし、昭和末期から平成にかけて、アライグマのペットとしての人気が高まり、無謀にも年間20万頭も輸入され、一方、ぺットとしての人気が下がると不法にも山野に放棄され、平成の10年間に本道でも野外で自然増殖し始め、急速に生息地・生息数を増加した。平成29年3月末で全道149町村とほぼ全域で生息が確認され、H27年の農業被害額は約9千万円、捕獲数は1.1万頭といわれる。
アライグマはタヌキによく似た動物で木登り、泳ぎが得意で好奇心が強く、小動物、昆虫類は何でも食すほか、スイートコーン、スイカ、メロン等農作物や果物を好み、自然生態系(食物連鎖)の上部に君臨し、夜行性で年1回3月頃に最大7~8頭も出産する極めてやっかいな排他的な外来生物である。
私たちは北海道で初めて、道の委嘱を受けて箱ワナでアライグマの捕獲を始め10年間で約3千頭を捕獲した。当初は札幌、恵庭など道央地域で人目につき話題となったが、昨今では全道否日本中に生息し、我が国の自然生態系を初め住環境や果樹や農作物などに極めて深刻な影響を及ぼしている。その経過は、平成11年、私は道を退職後、森林整備公社に就職し、翌年からアライグマ被害防除のため捕獲事業に携わることとなり、北大、北海道酪農学園大の協力を得て、その捕獲方法や生息環境の調査・研究を行った。
アライグマの生息数調査は、野ねずみと同様に除去法によることとし、生息環境の調査は、多変量解析に依ることとした。また、捕獲用の箱ワナやその餌は北大の指導により行うこととした。このような方法で道央を中心に捕獲を実施した。その結果次のようなことが判明した。
1 生息環境について
・生息数の多い立地は、大森林に接した水田林縁や大きな流域を持つ河川や池の周辺、耕作地などに隣接する樹林地内である。一方、生息の少ないのは、人工林など針葉樹林や森林流域を持たない用水路、原野、湖沼などである。                           箱ワナで捕獲されたアライグマ
・アライグマは、主に人里離れた森林内に生息し、メスは、子育てや生存をかけて里山の人家、畜舎周辺、大小の河川、森林沿いの田畑を徘徊する。一方、オスの行動圏は大きく、殆どの立地におよぶ。アライグマの主要な移動ルートは河川沿いである。この移動ルートがワナ設置の最大の立地(ポイント)である。
2 箱ワナによる捕獲と排除の可能性
・アライグマは、いずれの立地でも捕獲されるなど、極めて旺盛な行動力を持つ、排他的な外来種である。しかし、如何に努力しても、箱ワナのみの捕獲圧では、100ha当たり最低0.2頭が限度で、目下、猛烈に区域、生息数を拡大しているアライグマに対しては、抜本的な総合防除体制を確立しない限り、野外からの排除は極めて困難である。

私は現在、農水省のアライグマ、野ネズミの農作物被害対策アドバイザーに登録しています。これらの被害を受けていたらご一報ください。道央以外の遠隔地には、すぐにはゆけませんが情報でしたらお受けし、対策を共に考えます。よろしく。

アライグマ(森林技術投稿)